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職務著作における著作者人格権(会話風)

A子

B美が作った我が社の顧客管理システムだけどさぁ
これって著作権はB美が持ってるの?

C菜

A子社長、違いますよ~

著作権は我が社のものだと思うです~

A子

え?ほんと?

B美

法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。

著作権法第15条の2に明記されている『職務著作』規定ね

A子

いや、条文を暗記しとるんかーい!

さすがというか何というか…(笑)

C菜

で、社長~

どうしたんですかぁ~?

A子

いや、この前、商工会議所の会合に出た時に、うちのシステムを知り合いの社長に自慢したのよ

したら、うちにも導入したいって言われちゃってねぇ

B美

別に構わないけど、必ず請負うけおい案件にしなさいよ

まさか無料ただであげるなんて言わなかったわよね?

A子

え?えーっと、どうだったかなぁ(汗)

C菜

あ、これはヤバいパターンかもです~

B美

その会社向けに多少のカスタマイズが必要かもしれないし、それでなくても設置デプロイの工数は発生するわよ

A子

ま、まぁ、その話はとりあえず置いといて…

とりあえずは権利関係、つまり著作権の有無をはっきりさせときたいのよ

B美

だからさっきも言った通り、著作権はこの会社のものよ

私がプログラムを保守(修正・改良・変更)できるのは、会社の業務命令があるからってことになるわね
保守って、本来なら同一性保持権を侵害する行為になるんだけど…

あ、もっともプログラムの改修については、ある程度なら同一性保持権の適用除外になるって考え方もあるんだけどね

A子

どういつせいほじけん?

…って何?

C菜

同一であることを保持する権利ですよ~

A子

まんまやないかーい!

B美

いえ、C菜の言った通りよ

同一性を保持するってことは、その作品に対して改変を許さない
言い換えれば、作品を改変できるのはその著作者のみってことなのよ

余談だけど、これは「著作者人格権」を構成する三つの権利の内の一つってことになるわね

A子

普通の著作権とは違うの?

B美

著作権って大きく分けると二つに分類されるのよ
一つが「著作者人格権」、もう一つが「著作財産権

一般的には「著作財産権」のことを著作権と呼ぶ場合が多いわね

A子

なるほどねぇ
じゃあ、B美には以下の業務を指示します

我が社の顧客管理システムを○○社さん向けに導入する場合、システムのカスタマイズが必要かどうかってことと、その設置における工数調査をしてください
その見積り次第で、請負うけおい契約にするかどうかを先方の担当者と協議するからさ

B美

了解

○○社さんに出向いて調査しないといけないから、そこの社長にはきちんと話を通しといてね



B美

あれからちょうど一週間になるけど、これが報告書よ

工数と見積り金額を確認してね

A子

ほーい

あ、そうだ
ちょっと確認したいんだけど、先週言ってた『職務著作』に関して生成AIである「ChatGPT」に質問してみたのよ

C菜

無料版ですかぁ~?

A子

まぁ、そうなんだけどね(苦笑)

で、権利の保護期間について質問してみたんだけど、そのとき気になることを言ってたのよ

B美

権利の保護期間だけど

・著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)については、一身専属性いっしんせんぞくせいという性質から著作者の死亡まで
・著作財産権(複製権等)については、著作者の死後70年または公表後70年

C菜

会社が著作者の場合って、どうなるんですかぁ~?

A子

まさにその点が気になって生成AIに質問したわけよ

B美

簡単よ

・著作者人格権は著作者の死亡までだから、会社が倒産するまで
・著作財産権は、公表後70年を適用するから、システムの運用開始から70年と考えれば良いかな

で、「気になること」って何だったの?

A子

いや、「ChatGPT」はこう言ってたのよ

法人が著作権者の場合、著作者人格権はその法人に属することはありません』だってさ
著作者人格権は譲渡できず、著作者本人のみに帰属するため、法人が著作者人格権を持つことはありません』とも言ってたわね

B美

何それ?
バッカじゃないの?

著作権法第15条で「著作者はその法人等とする」とあって、第17条では著作者には「著作者人格権」と「著作財産権」が発生すると明記してるわよ

A子

著作者人格権は個人にのみ帰属し、法人に譲渡することはできません
著作者人格権は個人にしか属さないため、法人はこれを持つことができません

だってさ

B美

いやいや、ある法律事務所のWebページを見たんだけど
職務著作の要件を満たす場合には,当該著作物にかかる著作者人格権及び著作権が原始的に法人等に帰属することになります
…って書いてたわよ

(出典はこちら)…クリックすると別ウィンドウで開きます

A子

うん、私もそれは指摘してみた

そしたら
その法律事務所の見解については、著作権法の一般的な解釈に反しているため、誤解を招く可能性があります
って言われちゃった(苦笑)

C菜

「ChatGPT」さんは、ほかに何と言ってたですか~?

A子

えっとね…

日本の著作権法では、著作財産権は法人に帰属することができますが、著作者人格権は個人にしか帰属しません
法律上の解釈としては、人格権は譲渡不可であり、法人には帰属しないというのが正確な理解です
法人が著作者人格権を「持つ」という誤った解釈が広まっている可能性がありますが、法的には個人にのみ帰属するものです
とかね

あ、あと
著作権法の解釈において、日本国法務省の公式見解も、著作者人格権は個人にしか帰属しないという立場を取っています
とまで断言してたわよ

C菜

えぇ、そこまで言われたら「ChatGPT」さんを信じざるを得ませんね~

B美

いや、真っ赤な嘘だから(笑)
生成AIって、平気でもっともらしい嘘をくからね

あ、ただし、「著作者人格権は譲渡できない」というのは正しいわ
著作財産権が譲渡できる」のに対して特徴的な点よね

A子

それでね、私もなんか怪しいと思って、その法的根拠というか証拠エビデンスの提示を求めたのよ
そしたら

著作者はその作品について著作者人格権を持つとされていますが、この「著作者」は個人を指します
法的根拠としては、著作権法第11条により、著作者人格権は「著作者に帰属する」と明記されています
この条文からも、著作者人格権は個人にのみ帰属することが示されています

だって…

B美

著作権法第11条って「二次的著作物」に関する条文だし、まじで嘘八百ね
「著作者に帰属する」という文言自体、著作権法の条文中のどこにも出てこないし…(苦笑)

あと、その個人って自然人(生きている人間)だけじゃなく、法人格を持つ法人も含むと解釈すべきよね

A子

うん、それも聞いてみた

法人は法人格を持ち、契約の主体として機能しますが、著作者人格権については、以下の理由から個人にのみ帰属します
 『1.人格的権利: 著作者人格権は、創作した個人の人格や感情に基づく権利であり、法人にはそのような人格が存在しないため
 『2.法律の原則: 日本の著作権法では、著作者はあくまで個人として定義されており、法人には譲渡できないことが明示されています

だってさ

C菜

頑として自分の意見を曲げないぞ…っていう気迫を感じます~

ある意味、感心します~

B美

まぁ、生成AIを説得して、意見を変えさせるなんて絶望的に無理なんだけどね(笑)

それができるのは教師(生成AIに学習用データを投入し、訓練トレーニングする人)だけだし…

A子

私もネットで色々調べてたら、文化庁のWebサイトの中にこういう文章を見つけたわ
「著作者人格権」は一身専属の権利とされているため(第59条)、著作者が死亡(法人の場合は解散)すれば権利も消滅することとなります

(出典はこちら)…クリックすると別ウィンドウで開きます

結局、私の知りたいことはまさにこれだったわけだけど、しっかりと「法人の場合は解散」って書いてるのよね
ってことは、法人にも著作者人格権が発生するってことじゃん

B美

それを「ChatGPT」に指摘してみた?

A子

もちろん!
そしたら

その記述は著作者人格権に関する議論の中で重要な点ですが、著作権法において法人が著作者人格権を持つという解釈は一般的ではありません

著作者人格権は個人に固有の権利とされており、法人はその人格を持たないため、法人が著作者人格権を有することは法律上認められていません

その記述が指しているのは、法人が解散することにより権利が消滅するという状況であり、これは法人が著作者人格権を持っていることを意味するものではありません

…だってさ

C菜

なんだか「結論ありき」で、強弁してるようにしか思えませんね~

A子

うん、どう考えても文化庁に喧嘩を売ってるような感じなんだけどさ、こうも言ってたよ

文化庁の見解について、その文脈から法人が著作者人格権を持つと解釈することも可能ですが、一般的な法解釈としては、著作者人格権は個人に固有の権利であるため、法人が持つことは認められていません

だそうよ

C菜

結局のところ、正解は何なんですかぁ~?

B美

もちろん、法人も「著作者人格権」を持つことができるわよ
だって、文化庁の著作権課に問い合わせて、メールで直接返答をいただいたもの

そこにはこう書かれていたわ

著作権法第15条における職務著作の要件すべてに合致し
 法人が著作者となる場合は、
 その法人は著作人格権も享有することとなります。

…ってね

C菜

これを指摘しても「ChatGPT」さんはかたくなに認めないんでしょうね~

B美

A子

でしょうね~(笑)



B美

後日、「ChatGPT」だけじゃなく、その他の生成AIの意見も聞いてみたわ(気になったから…)

・OpenAI ChatGPTチャットジーピーティー … 著作者人格権は法人に帰属しない
・Microsoft Copilotコパイロット … 著作者人格権は法人に帰属しない
・Google Geminiジェミニ … 著作者人格権は法人に帰属しない

なんと!
全員が同じ意見でした(笑)

A子

生成AIの訓練トレーニングデータが同じものだったのかしら?

C菜

メーカーが違うからそんなわけないと思いますよ~

でも不思議ですよね~(苦笑)

B美

生成AIの訓練トレーニングデータって、インターネット、書籍、論文、ニュース記事等から抽出してるはず…
んで、ネット上の情報は概ね「著作者人格権は法人に帰属する」という立場なんだよね
…ってことは、生成AIが「著作者人格権は法人に帰属しない」という結論に到った理由って、どっかの偉い学者先生の論文にでも影響されたんじゃないかな?

まぁ、真相は闇の中なんだけどね(苦笑)

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