著作者人格権の不行使特約(会話風)
C菜
B美
A子
うちの顧客管理システムってB美が作ったから、『職務著作』規定によって我が社の著作権になったじゃん
これがもしも外注だったらどうなるの?
著作権って『譲渡できる・できない』って話が以前出てたよね?
C菜
B美
なので外注した場合は、そのシステムを製作したソフト会社とうちの会社との間で『著作権譲渡契約』を結ばないといけないわ
A子
今、C菜が言ったじゃん
「著作者人格権」は譲渡不可って…
C菜
契約書さえ交わせば、譲渡不可な権利であっても譲渡できるんですかぁ~?
B美
だって、「著作者人格権」が譲渡不可だってことは著作権法で決まってるもの
あ、あと第27条及び第28条を譲渡対象として明記しておかないと、勝手に除外されるから注意してね
A子
第27条及び第28条って何なのよ?
B美
正確には
・第27条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
・第28条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
…ってことよ
A子
と言うかさぁ、「翻案権」って「同一性保持権」とどう違うの?
B美
あと、二次的著作物というのは、元の作品(原著作物)を改変して生まれた新たな作品(二次的著作物)ってことよ
で、二次的著作物の著作者はその改変した人物になるんだけど、原著作物の著作者にも同等の権利が発生するのよ
C菜
B美
まぁ、同人誌って元々の著作者の「同一性保持権」や「翻案権」を侵害しまくってるんだけどね
ただ、ごちゃごちゃうるさく言わないし、第28条の権利も主張してないみたいだけど…
C菜
B美
「著作者人格権」は人格的利益の保護、言い換えれば「著作者の名誉を守る」権利ってことよ
「著作財産権」のほうは、財産的利益の保護ってことがすぐに分かると思うんだけど…
A子
問題は譲渡できない「著作者人格権」よね
外注先のソフト会社が「著作者人格権」を主張しようとしたらどうすれば良いの
C菜
譲渡できないのなら、その権利を使えないようにすれば良いんですよ~
B美
それこそが「不行使特約」なのよ
「著作者人格権」の行使を禁止する旨、著作権譲渡契約書の中に盛り込んでおくの
要は「権利を主張させない」ってことね
A子
どう考えても著作者に不利益を生じさせる契約になるんじゃない?
B美
著作者が納得して契約しているのならば、別に「法律に違反して無効」なんてことにはならないわよ
というか、みんな必ず「不行使特約」は入れるからね
あ、ただしあまりにも著作者にとって不利な契約になってたら、「公序良俗に反して無効」になるかもしれないけど…
A子
こうじょりょうぞく?
C菜
言い換えれば「公共の秩序を守る常識的な考え」のことです~
B美
・民法第90条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
ってことよ
余談だけど、『「不行使特約」は「公序良俗」に反するから原則的に無効』という持論を持つ弁護士先生に会ったことがあるわ
まぁ、どマイナーな意見なんだけど…(苦笑)
A子
まとめると、こういうケースでは『著作権譲渡契約』を結ぶこと
その際の注意点として
・第27条及び第28条の移転を明記する
・著作者人格権については不行使特約を盛り込む
ってことか…
B美
プログラム(第15条の2)だけじゃなく、デザイン(第15条)を外注するときなんかにも必要な知識だから、必ず覚えといてね
C菜
A子社長、あんまりB美部長に無理を言っちゃダメですよ~
A子
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